2019年 12月登山の日 「凍てる尾根 白銀の頂に至る」

12月登山の日

 

おすすめの山 【北岳】

深田久弥の著書「日本百名山」-新潮社-によると、「北岳の高潔な気品は、本当に山を見ることの好きな人だけが知っていよう。白峰三山の中でも、北岳は形がスッキリしていて、清秀な高士のおもかげがある。(中略)北の駒ヶ岳やアサヨ峰まで退いて望んだ時の北岳の姿は、まさに絶品である。」と紹介されています。今年、みなさんも冬の北岳を訪れませんか。
 

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おすすめのコース

(行程)
1日目 奈良田-アルキ沢橋-池山御池小屋
2日目 池山御池小屋-ボーコン沢の頭-八本歯のコル-北岳山頂
*通常は往路を戻り、池山御池小屋に泊まり、翌日下山。
 

コースの特徴
奈良田からアルキ沢までの林道が長く、リニア新幹線の工事車両が時折通過するので十分注意しましょう。登山道は池山御池小屋まで急登の連続です。凍結していることも多く、樹林帯ですが滑落の危険性があります。アイゼンの装着タイミングを逃さないようにしましょう。ボーコン沢の頭から八本歯のコルまでは痩せ尾根の下降で、ロープで確保が必要です。コルから北岳の登りはスリップに十分注意が必要です。下降時はロープの確保が必要なほど氷化することもあります。
 
 

冬山のリスク 低体温症・凍傷

先月、冬山の主なリスクとして転滑落・雪崩のリスクを取り上げました。今月は低体温症・凍傷について取り上げたいと思います。低体温症は寒気に長時間さらされると発症します。低温に加え、強風・衣類の濡れが発症を加速させます。凍傷の発症は-4℃以下の寒冷刺激にさらされた時に発症します。発症には風力、湿度、寒冷曝露(ばくろ)時間、服装が関係します。注目していただきたいのが、共に【濡れ】がその要因となっています。近年は暖冬傾向ですから、南岸低気圧の通過に伴う湿雪や標高の高い山の降雨等、通常では考えられない事態にさらされる事が多くなりました。十分な準備で冬山に向かいましょう。
 
 
<低体温症を防ぐレイヤリング術>
 
①ベース(インナー)レイヤー
湿気を吸収、吸着熱を発して、保温性に優れるメリノウールのベースレイヤーの下に、化繊の吸汗速乾アンダーを着用するとさらに濡れに強く快適です。
 
 
②ミドルレイヤー
フリースは保温・透湿性能共に行動に適しているので、おすすめですが嵩張ります。そこで、はっ水・防風の薄手のミッドシェルを活用して、森林限界まではミッドシェル・ベースレイヤーを組み合わせで行動して、森林限界以上は撥水ダウンを使ったインナーダウンを着用すると、濡れに強く携帯時にかさばらず便利です。
 
③アウターレイヤー
冬山は思わぬ降雨による濡れや過冷却水による凍結等、厳しい条件に耐える防水透湿素材ジャケットに加えて、状況に応じて脱ぎ着のしやすいサイドジッパーを備えたオーバーパンツがお勧めです。
 
④防寒着
休憩時やテント泊・クライミングのビレイ時などコンパクトで暖かいダウンジャケットは必携です。濡れに強い撥水加工の高品質ダウンを選びましょう。
 
 
低体温症を防ぐためには風・濡れを防ぐ効果的なレイヤリングに加え、十分なカロリー補給。現地の情報(気温、雪量、風速など)を収集して、充分な装備を準備しましょう。
 


 
<手足の凍傷を防ぐために>
 
①手袋
手袋も凍傷を防ぐためにインナーグローブ+ウールグローブ+オーバーグローブとレイアリングすると効果的です。特にインナー・ウールグローブは必ず予備を用意して濡れに備えます。
 
 
②靴・靴下・スパッツ
濡れ、強烈な寒気に対応できるワンランク上の保温性を備えた靴が必要です。靴下は良質のメリノウールは当然ですが、インソールを断熱性の高いものに取り換えるのも効果的です。加えて雪の侵入を防ぎ・保温性を高めるゲイター(スパッツ)は冬用のバンドに強度のあるものを選びましょう。フロント開閉タイプは着脱がしやすくてお勧めです。
 
 
凍傷は寒冷からの保護に加えて、濡れた状態に強風を受けると凍傷の危険性が高くなるので、濡れた衣服・グローブなどは直ぐに交換しましょう。また、凍傷は患部が白くなって、疼くような痛みを覚える初期段階で、ぬるま湯につけたり、入念にマッサージするなどの処置を施しましょう。

 
 
 
「備えあれば憂いなし」
皆様がすばらしい登山をされる事を石井スポーツスタッフ一同願っております。

 
 

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